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carpe diem

フランスに留学中。健康で文化的な生活を目指す。

異邦人

今週の目標の一つである本を購入するためにfnacへ行った。易しい小説を買うつもりだったが、30分ほど売り場をうろうろして『L'étranger』を買った。日本語訳で何度か読んだことがあるので時間はかかるがなんとなく読める。

高校生のとき、夏休み明けだかのとにかく暑い日に、現代文の授業で教師が「異邦人を読んだことのある人はいるか」と尋ねたことがあった。とても静かな近くの席の男子が手を上げると、教師は嬉しそうに「どうだった?感想は?」と聞く。すると彼は「つまらなかった」とひとこと。がっかりした様子の教師と対照的に我々生徒たちはみんな笑っていた。

あれから数年経って初めて読んだとき、同じ様な感想を持った。主人公の心情が分かるようで分からなくて不安定な気持ちになった。当時のわたしは「つまらない」と言い切ってしまうのが負けを宣言しているように思えて、必死に面白さを探した。けれど、大学一年生のわたしには見つけることができなかった。

どの本を面白いと思うか、どの本に感銘を受けたか、そういうものはタイミングなんだなと最近思うようになってきた。名作だから、ベストセラーだからといっても、自分の心の状態や体調がマッチしていなければ、ほとんどなにも残らず終わる。つまらないと言い切ってしまっても仕方がない。

今では読んでいて面白さを感じることの出来ない本はどんどん積んでいくか、最後まで読んでおもしろくなかったら素直に「つまらなかった」(又は、not for me)と思うことが出来るようになった。それは、目に見えない何かを気にして、見栄を張っていた、幼い自分から少しだけ成長できたということなのかしらん。

いま考えると、「つまらなかった」と言い切れた彼はわたしより何倍も大人だったのかもしれない。

 

そういえば、選考試験の和訳の問題は『異邦人』から出題された。運よく読み返した後だったというのもあって問題なく解けた。試験の前に再読していなかったら、わたしは今フランスにいないかもしれない。そう思うとなんだか不思議である。

わたし以外にも試験を受けた人は何人かいて、その中から選んでもらったのだけど、他の人と比べてどこが良かったのか未だに分からない。出国前からずっと考えている。

要するに、今の自分に自信がないのだ。前年度に派遣された人と比べるとコミュニケーション能力はあまりにも低いし、フットワークも軽くない。前期終了時にB2レベルまでに到達するという目標を立てたものの、今の自分からするとあまりにも無謀である気がしてならない。

そして、自分が何かしらの痕跡や爪跡を残すことが出来ないような気がして、寂しい気持ちになる。

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(異邦人って聞くと、どうしても「ちょっと~振り向いてみただけの~」の方を思い浮かべて、歌ってしまう)